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建設産業の新たな針路「産・学・官連携」

大阪産業大学発ベンチャー企業「OSU Civil Planning」 松本裕輝代表取締役に聞く 注目の大粒径排水性アスファルト舗装 大阪産業大学発ベンチャー企業として、平成十六年八月に設立された(株)OSU C ivil Planning(オーエスユー シビル プランニング、大阪府大東市) の活動に、いま熱い視線が注がれている。松本裕輝代表取締役CEOが、同大学都市創 造工学科の荻野正嗣教授や大前達彦助手が開発した「大粒径排水性アスファルト舗装」 の普及促進を図る一方、これをベースに今年7月13日には、新たに産・学・官で構成し た「新環境舗装技術研究会」を立ち上げた。ヒートアイランド対策と再生骨材使用の舗 装(排水性舗装)の二つの分科会を設け、100%のリサイクル化を目指す。耐久性、排 水性、消音性を大幅に向上する大粒径排水性舗装の技術は、新式アスファルト舗装とし て現在特許出願中。
  松本代表取締役CEOは、大阪産業大学工学部都市創造工学科を卒業し、同大学院工学研究科アントレプレナ ー専攻を修了。大学四年の時は、ドイツのヴュルツブルグ大学物理学部に交換留学して、海外生活を一年間体 験。帰国後、大学卒業と同時にアントレプレナー(技術系)に所属し、企業経営や特許などの知識を学んだ。 ベンチャー企業の設立は、卒業研究(卒研)が大きなきっかけだったという。   ◆「卒研のころ荻野教 授や大前助手によって 大粒径排水性アスファ ルト舗装の技術が確立 されまし た。一年間の ドイツ留学によって、 一年卒研が伸びたため にこの技術に出会うこ とができました。こ れ が非常に幸運でした。 それをもとにベンチャ ー企業を興しました。 大粒径は2004年1月に大阪府枚 方土木事 務所と官・学連携事業 として、実際、大阪府 交野市の国道168号 で試験施工して以来、 京 都府や大阪府、兵庫 県で採用され施工実績 は九件を数えています。 近畿地方整備局が毎年 行っている 技術研究発 表会でも大粒径排水性 アスファルトの技術を 発表し、大学としては 初めて奨励賞をいただ  きました」 大粒径排水性アスファルト合材は、同大学都市創造工学科道路工学研究室で長期にわたって研究されてきた。 平成九年に日本道路会議論文集、10年に土木学会の学術講演会、2001年に日本道路会議論文集としてそれぞれ 発表。また、昨年五月には韓国・ソウルで開かれた国際舗装会議でも発表された。これまで大阪府などの自治 体や舗装施工業者らに行ったプレゼンテーションは50回以上を数える。 その最大の特徴は、骨材の最大粒径 32?(通常10から13?)として強度を確保、全体の10%程度入れていること。他にバインダー(アスファル ト)量3%程度(通常4から6%)、フィラー(石粉)量は通常よりも多く6%程度配合している。また、砂 を一切使っていないのも特色だ。 ◆「非常に環境に優し いアスファルトです。 最大粒径32?という とてつもない大きな骨 材を入れてい ますが、 その一方、これまで舗 装で使ってきた骨材よ りももっと小さなもの も使っています。この  ため表面は非常に滑ら かになっています。メ リットとしては、耐久 性が四割以上アップし、 排水性 (透水性)機能 も従来に比べて大幅に 向上しました」 消音性については、従来の排水性舗装よりも3デシベルまで下げた。環境騒音値については、五デシベル以上 の騒音が低減された。従来の排水性舗装に比べて大粒径は倍近い消音性という画期的な技術だ。 ◆「表面が滑らかで大 きな骨材の回りを細か い骨材で埋めているた めに、結果として凹凸が少ない。も う一つは、連続的に繋がった隙間が下までつづいているために音が逃げていく道が多いためです。施工性につ いても、これ までローラーで転圧しすぎると空隙率の管理が難しいといった課題がありました。大粒径は、 理論上、いくら転圧しても隙間がなくな ることはありません。20%以上の空隙率の 確保が容易です。ま た、従来の排水性舗装は、WT試験において、開始して五分もすれば2?程度の変形がみられましたが、大粒 径は120分試験しても2?の変形を起こさないこ とを実証しています。要するに大きな骨材を入れると強く なること、もう1つは骨材との噛み合わせ。大粒径は砂を使っていないために噛み合わせを狂わす要因があり ません。この2点から高耐久性が生まれました。施工管理も容易で、イニシャルコストも従来の排水性 舗装 に比べて同程度、 あるいは低コストで済 むと言われています。トータルコストとして は、大幅なコスト ダウンを実現します」 「新環境舗装技術研究会」を設立 この新技術をベースに7月13日には、産・学・官連携の「新環境舗装技術研究会」を設立。設立発起人代表は 荻野教授で、事務局を大阪産業大学に置く。研究会には都市環境対策としての「ヒートアイランド対策」、資 源の有効利用としての「再生骨材使用の排水性舗装」の二つの分科会を設置。構成メンバーとして現在、ニチ レキ、ガイアートT・K、道路工学研究所、リサイクル協同組合、福田道路、協和道路(大阪)、OSUシビ ルプランニング、昭建、大阪産業大学工学部が入っており、オブザーバーとして大阪府都市整備部が参画して いる。 ◆「研究会は、5年前に連携して大粒径の試験施工をした大阪府とのつながりにより立ち上げることができま した。新技術をベースに新たな道路舗装技術を探求し、ヒートアイランド対策としての高機 能舗装の施工技 術や、汚泥の骨材として活用するリサイクル技術に関して、舗装施工業者や大学を中心に行政も オブザーバ ーとして参集していただき、課題を明確にし、問題解決の手段を見出すことを目的としています。私たちは大 粒径の特許の 権利に対してのロイヤ リティーを徴収します。また、大手舗装会社へ の技術コンサルタン ト 業で、VE入札や性能 規定入札が増えていますが、そういった場合、舗装会社が大粒径の技 術提案書 類を提出する 際に必要な仕事をお手 伝いします」産・学・官連携は、相互の信頼関係の醸成と構築が成功 への秘訣。今回の研究会は双方の考えが一致した。   ◆「大阪府は、いま下 水汚泥を溶融してスラ グ(石)にしています。 その石を舗装に再利用 できない ものかと。こ れが研究会の一つの大 きな目玉で、100%のリサイクル化を目指 しています。ヒートア  イランド対策でも、その舗装に保水剤や色彩 を施すといった研究を 進めるなど、リサイクル化を目指して います。今年一年は耐久性や配合の室内実験など行います。その結果をもとにして来年度は経済産業省近畿経 済産業局の地域新生コンソーシアム研究開発制度(新産業・新事業の創出に向けた産・学・官連携による共同 研究体制の委託費事業)の募集に応募したい。ぜひ採択 していただき、フィールド実験を行いたいと思って います」 (水谷次郎) まつもと・ゆうき================================================================================= 1999年4月大阪産業大学工学部土木工学科入学(現都市創造工学科)、2002から2003年ドイツ・ヴュルツブル グ大学物理学部に交換留学、2004年3月大学を卒業し、4月に同大学院工学研究科アントレプレナー専攻入 学、2006年3月同大学院を修了。OSU Civil Planningの設立は2004年8月。大阪府出身、 26歳。
2006年08月21日
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