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枚方合同宿舎1・2・3号棟が完成

PFI法に基づく特定事業 財務省近畿財務局が、PFI法に基づく特定事業として選定し、事業主体であ るPFI枚方住宅(株)(大林組1社の出資による特別目的会社)が進めた 「公務員宿舎枚方住宅(仮称)整備事業」によって「枚方合同宿舎1号棟・2 号棟・3号棟」が完成した。老朽化が進んでいた狭隘・低層の公務員宿舎を、 国有財産の有効活用の観点から、集約・高層化するとともに、民間の資金や技 術的な能力を活用することによって財政資金の効率的活用を図ったもので、地 上8階建ての1号棟(独身棟・315戸)、地上5階建ての2号棟(単身棟・54 戸)、地上10階建ての3号棟(世帯棟・104戸)のほか、2層3段式の駐車場 棟(190台収容)ならびに付帯的事業(コンビニ)で構成。建築工事の施工を 担当した大林組では、竣工後7年間の維持管理を委託することを勘案した施工 計画に基づきながら、近隣に対する配慮や安全管理に細心の注意を払い、多く の関係者から寄せられていた全幅の信頼に応えた。 【写真上は完成した枚方合同宿舎1・2・3号棟、写真下はダイニングキッチ ン】 ■設計メモ――均質性・多様性、そして公共性
枚方市駅から国道を東南の方向に進み、天津橋にさしかかると、右前方に豊かな緑に囲まれた小高い丘が見え てきます。その丘に建つ集合住宅が枚方合同宿舎です。本事業は、敷地面積約11haの内1.92haを建て替えるも のです。南面配置で等間隔に並ぶ5階建ての宿舎群は、1955から1971年に順次建設され、当時の公務員宿舎に よく見られる、均質で開放性の高い住棟構成です。緩やかな起伏と豊かな樹木があいまった外部空間は、グラ ウンド・花見のできる広場・子供の遊び場等、多様性に富み、周辺にもやさしい街並み景観を構成すること で、宿舎の公共性を高めています。 《集約・高層化で国民財産を有効活用》 この均質性・多様性、そして公共性を、新しい公務員宿舎でいかに継承・発展させていくかが計画のテーマと なります。提案審査では、価格と提案内容が競われ、入居者の平等生の観点から住戸プランの均質性が要求条 件となります。一方、多様化する居住者のライフスタイルに応えていくことも重要です。この均質性・多様化 という、相反する条件を同時に満たすことが提案には求められました。そこで、合理的で均質なスケルトンを 設定することで価格を抑え、そこに多様性を付加し居住環境の質を高める、という手法を採用しました。 まず、スケルトンについては、タイプ毎(独身棟・315戸、単身棟・54戸、世帯棟・104戸)に住棟を集約し、 周辺地域への負荷を最小限に抑える構成・配置としました。住棟は全て等スパン・等階高の合理的設計とし、 最も戸数の多い独身棟に中廊下を採用する等、集約化を図ることで価格を抑えました。また、住棟を36m毎に 分節・雁行させることで圧迫感を軽減し、周辺地域にもやさしい開放的な外部空間を創出しました。 次に、多様性を付加しています。世帯住戸のウォークスルークローゼット、単身住戸の可動家具は、居住空間 の可変性を高める仕掛けです。独身棟のEVホール、階段室、独身住戸の玄関部に設けたアルコーブ、開閉式 ガラススクリーンは、中廊下と独身住戸の双方に光・風を導くとともに、街路のような中廊下を創出しまし た。 アルミとガラスで構成したファサードは、バルコニーに求められる通風・採光という機能をきめ細かくデザイ ンとして昇華したものです。白い外壁・アクセントの黄色とアルミ・ガラスのコンビネーションによる繊細で 淡いデザインは、太陽の光を浴びてその姿を様々に変容させます。朝、夕に見せる暖かみのある表情が、枚方 の新しい町並み景観を特徴づけます。住棟の集約化によって創出した約2,000?の公園には、計画地で発掘さ れた旧日本陸軍禁野火薬庫跡の形を、当時利用されていた間知石そのもので再生し、地域の記憶・時の流れを 刻みました。コンビニエンスストア、住棟エントランス、けやき広場、築山、交流ラウンジ、プレイヤード、 集会室、桜並木等の共有空間は、居住者の様々な交流を促し、四季折々の変化が楽しめる樹木とともに、公園 の多様性を高めます。 また、オール電化(独身棟)、雨水再利用自動潅水システム、太陽光発電照明等、省エネルギーへの積極的な 取り組みによって、水光熱・維持管理費の削減にも配慮しました。この計画は、グレードの高い材料や豪華な 機器で住戸性能を高めるのではなく、均質性、・多様性をテーマに、資源の再利用、光・風・樹木といった自 然の活用、そしてそれらを最大限に導き出すアイデアと工夫で居住環境の質を高めたものです。公的資金の有 効活用、地域との調和といった公共性を強く意識した計画で、今後の公務員宿舎の新しいモデルとなることを 目指しました。この枚方合同宿舎が、居住者の快適な生活舞台になるとともに、周辺地域にも親しまれる豊か な環境となることを期待しています。((株)大林組本店1級建築士事務所 建築設計部 東井嘉信) ■全国の信頼に応えた大林組、高品質を徹底追求 近隣にも万全の対応 PFI事業として注目を集めていた公務員宿舎枚方住宅新築工事。竣工後7年間の維持管理を受託することを 勘案した施工計画に基づいて、品質の向上を目指しながら安全第一に工事を推進し、事業者の近畿財務局から 寄せられていた期待に応えたのは(株)大林組で、「大林組に施工してもらって本当に良かった」という印象 を残してプロジェクトの嚆矢を飾るのにふさわしい高品質施工を達成した。 畑田光所長を中心に、若い精鋭職員が各協力会社の若手作業員と一丸となって取り組んだ工事は、一昨年の11 月16日に百済王神社で厳粛に執り行われた安全祈願祭を経て12月から本格化。「下準備ができているのに、発 掘調査の前作業があり、現場に乗り込めないのは、施工担当者として非常に焦りを覚えた」(畑田所長)。そ れに加え、現場に乗り込んでからも、埋蔵文化財発掘調査によって掘り返された土にダンプトラックはもとよ りバックホーなどの掘削重機も足を取られるような状態だったため、作業エリアと仮設通路エリアを中心に地 盤改良を順次行い、地業工事の態勢を整えた。 地業工事は、地盤改良として深層混合処理工法を採用し、工期の短縮を図るために、小径で群配置されている 地盤改良体を支持力の確認をした上で大径の地盤改良に変更してクリティカルになる3号棟から先行着手。打 設したのは、径1,000から2,000?、長さ約6mの地盤改良体で、合計507本の地盤改良工事を行った。地業工 事が完了したエリアから掘削に着手し、第一のマイルストーンである年内での3号棟の捨てコンクリート打設 を達成。年明けからは躯体工事が軌道に乗った。 躯体工事を進めるに当たっては、前面道路に大型車両規制があるため、打設するコンクリートボリュームに基 づき工区分けを行うとともに、生コンの1日の運搬ボリュームを工程の基本において推進。また、躯体工事に 従事する労務系各業者との事前打ち合わせにおいて、「効率的な工事消化に対する工夫の検討」を実施し、各 社の必要な労務量についての確認を行った上で工程を決定した。 基本的には在来工法だが、バルコニーおよび屋外廊下にハーフPC版を採用して現場での作業量を軽減した躯 体工事は、ワンフロア当たり12日タクトで上昇。相当のボリュームがあったものの、労務量の確保を考えて、 職種によっては2業者に分割して発注するという対応策を講じていたので、第2のマイルストーンである躯体 工事は予定通りに進捗し、7月末に打ち上げを果たすことができた。また、仕上げ工事においても同様の観点 から業者を分割。しかし、異なった業者が異なった仕様で工事を行うことのないように細かなディテールに至 るまで注意深く施工管理を行った。 具体的には、全戸数が473戸にもおよぶ住宅であるため、1か所の不具合でもすぐに47か所になってしまうの で、この様なことのないように、仕上げ工事当初は木下地から一通りの仕上げが終わるまで入念に何度もチェ ックを繰り返し、仕様の適合、ディテールのチェック、不具合の有無、施工の合理化など、考えられるあらゆ るファクターを確認してから仕上げ工事を流れに乗せた。なお、住戸内の型枠支保工については、技術検討を 重ねた結果、クイックアップ工法で施工し、支保工の材料を効率よく転用する上において大きな効果をもたら した。 《近隣にも万全の対応》 このほか、大梁の主筋がD19以上のものに関しては、ジョイントに機械式継手を採用。これにより、敷地の余 裕が比較的あった現場内に地組ヤードを設置して行う鉄筋先組工法の採用が可能となり、鉄筋工事における労 務の効率化を図ることができた。「ここ1番のクリティカルパスを職員ならびに作業員全員に周知させ、メリ ハリをつけた工程管理を行う」(畑田所長)全体工程と、最初に設定したマイルストーンに基づいて工期内竣 工を無事に果たした(株)大林組。品質管理においては、「洩れない」、「錆びない」、「壊れない」を基本 におき、「人に優しい建物」の施工に努めた。 一方、施工場所が近畿財務局枚方合同宿舎の南西部に位置する閑静な住宅街の一角で、枚方市民病院に隣接す るとともに、付近には保育所、学校などがあったため、工事期間中の騒音・振動・作業時間などには十分な注 意を払って施工。また、施工場所へのアクセスについても、大型車両規制道路を通行する必要があったため、 通行するすべての大型工事車両は事前に警察および枚方市土木局の許可を得て、資材の搬入を行った。安全管 理については、「全員が繊細な神経を持ち続け、その神経で感じたことに妥協をしない」という方針に基づ き、少しでも不安を感じた場合には、納得いくまで是正させることを徹底。全工期に亘って重大災害ゼロを達 成した。 ---------------------------- 畑田光所長の話=PFI事業であるこのプロジェクトは、引き渡しと同時に所有権は財務省近畿財務局に移管 されるが、7年間の維持管理をPFI枚方住宅株式会社に委託されている。工事期間中は、不具合のないこと は当たり前の事だが、メンテナンスに手間のかからない建物に仕上げるよう、また、事業主が宿舎の建設をP FI事業として大林組に発注してよかったと思ってもらえるような仕事をするために日々の業務をこなした。 今回のプロジェクトを推進するに当たっては、当社ならびに協力会社の若いスタッフが、全員で一致団結し、 前向きにあきらめない姿勢を持ち続けながら、楽しく仕事に取り組み、スムーズな工程進捗を図った。最後 に、監理業務を引き受けていただいた東畑建築事務所にも色々とご指導いただき、感謝したい。
2006年03月03日
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